共有

第69話  

松山昌平の威圧的なオーラに、鈴木秀夫は少し尻込みしていた。

 だが、これほどのカメラが彼らに向けられている今、この松山昌平も簡単には手を出せなかった。

 「昌平、俺が何を求めるかわからないのか?」

 鈴木秀夫は喉を鳴らし、大声で言った。「うちの姪は長年あなたに従順に尽くしてきたんだ。それなのに、あなたは彼女を捨てて、たかが法律事務所を与えるだけで済ませようとしてる。彼女がこれからどうやって生きていけばいいんだ?松山家のような大企業が、ここまで冷酷にする必要があるか?」

 この言葉に、人々はどよめき、記者たちは一斉にシャッターを切った。

 「うちの姪はしおらしく、度胸もない。昨晩、一晩中俺に泣きついて、彼女を助けてって言ってきたんだ......」

 「むだ口叩きたくない。10億円をくれ。それで俺たちは綺麗さっぱり消えてやる!」

 鈴木秀夫は待ちきれない様子で、がめつく要求した。

 「鈴木秀夫、黙れ!」

 篠田初は歯を食いしばりながら止めた。

 これ以上彼が口を開けば、自分が何を言っても無駄になってしまった。彼を引き裂いてやりたい気持ちだった。

 篠田初は松山昌平をそっと見た。彼が怒り狂うと思っていたが、意外にも松山昌平は冷静で、表情も変わらないまま、見知らぬ人が近寄るなと言わんばかりの冷たい顔をしていた。

 彼の高い身長と威圧感はまるで天神のようで、その姿は圧倒的だった。松山昌平は少しだけ体を傾け、冷たく指示した。「東山、彼を財務部に連れて行け」

 そして、大股でその場を立ち去った。

 これで終わりなのか?

 鈴木秀夫は口の中の唾を飲み込んだ。まさか、こんなに簡単に10億円を手に入れられるとは夢にも思っていなかった。

 松山昌平が手ごわい相手だと思い、ナイフまで用意して、いざとなれば死をもって脅すつもりだった。

 松山昌平がこんなに気前よく簡単に金を出すと知っていたら、もっと多くを要求していたのに!

 数歩歩いたところで、松山昌平は突然振り返り、茫然と立ち尽くす篠田初を冷たく見つめ、冷ややかに言った。「来ないのか?」

 篠田初は一瞬驚いたが、急いで彼に続いた。

 松山昌平は篠田初を連れて調査団のもとに戻り、堂々と彼女を紹介した。

 篠田初もすぐに気持ちを立て直し、堂々とした態度で振る舞い、調査団から何度も称賛を受けた。

 二
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status